1-9 民法改正で、配偶者居住権が新設されました。

令和2年4月1日施行。

従来の相続では、法定相続分で遺産分割した場合、居住用建物を売却して換金しないと、相続人間で分配出来ないというケースがありました。
例えば、居住用建物以外の財産が潤沢に残っていれば良いのですが、そうでない場合、居住用建物を売却して分割しなければならないため、配偶者が家から立ち退かざるを得ないといったケースがありました。そういう事態を是正し、配偶者の権利を強化するために、配偶者居住権が新設されました。

従来
(相続人が妻と子のみで、評価1000万円の建物だけが相続財産の場合)
建物を1000万円で売却して、
配偶者の相続分 = 500万円の現金。
子が相続する分 = 500万円。
で分ける。

配偶者居住権を設定する場合
(相続人が妻と子のみで、評価1000万円の建物だけが相続財産の場合)
建物を売却せずに、
配偶者の相続分 = 配偶者居住権(建物を使用収益する権利)。
子が相続する分 = 配偶者居住権が設定された所有権。
で分ける。

配偶者居住権が設定されることで、配偶者は亡くなるまで家に住み続けることが出来ますし、もし居住建物以外の財産があれば、それについても2分の1取得することが出来ますので、従来の制度に比べて生活費も多く確保することが出来るようになりました。

相続

旧 民法の制度

旧民法下では、配偶者居住権は規定されていません。
判例によれば、「配偶者が相続開始時に被相続人の建物に居住していた場合には、原則として、 被相続人と相続人との間で使用貸借契約が成立していたと推認する」とされていましたが、使用貸借契約は、借主の権利が弱く、第三者には対抗できないという問題点がありました。

賃貸の基礎知識1-8『使用貸借契約とは

配偶者居住権を設定するための要件とは

残された配偶者(妻)が、被相続人(亡き夫)の所有する建物に居住していた場合で、一定の要件を充たすときに、賃料の負担なくその建物に住み続けることができる権利です。(民法1028条

①遺産分割協議で、配偶者居住権を取得するものとされたとき。(民法1028条1項一号)

②遺言によって。(民法1028条1項二号)

③家庭裁判所の審判によって。(民法1029条

配偶者居住権の存続期間(民法1030条

原則としては、配偶者が亡くなるまで存続しますが、遺産の分割協議や、遺言の中に特段の定めがあるとき、家庭裁判所の審判において別段の定めがされた時は、それに従います。

配偶者居住権の第三者対抗要件(民法1031条

第三者対抗要件(建物が第三者に売却されてしまったた場合に、購入者に対して配偶者居住権があると主張するための要件)は登記です。建物所有者は、配偶者に対し、登記を備えさせる義務を負っています。

配偶者による使用と収益(民法1032条

配偶者は、建物に居住するにあたって、善良なる管理者の注意義務があります。

配偶者は、所有者の許可を得なければ、建物を増改築することが出来ません。

配偶者は、所有者の許可を得なければ、建物を第三者に貸すことが出来ません。

配偶者居住権は、第三者に譲渡することが出来ません。配偶者が建物に住む理由が無くなったとしても同様です。

居住用建物を修繕する場合(民法1033条

配偶者は、建物の使用や収益に必要な修繕することが出来ます。

配偶者が相当の期間内に建物修繕を行わない場合、所有者が代わりに建物を修繕することが出来ます。

配偶者は、建物に修理が必要な時で、自分が修理しない時は、所有者に対して通知する必要があります。

居住用建物の通常費用の支払い(民法1034条

配偶者が通常費用を負担します。

建物の固定資産税は、建物の所有者が納税義務者とされているため、配偶者居住権が設定されている場合であっても、所有者が納税しなければなりませんが、配偶者は建物の通常の必要費を負担することとされていますので、建物の所有者は、固定資産税を納付した場合には、その分を配偶者に対して請求することができます。

 参考:配偶者居住権|法務省

配偶者短期居住権とは(民法1037条

配偶者が相続開始時に、被相続人の家に無償で居住していた場合は、遺産分割をしていなくても、一定期間(遺産分割が終了するか、相続開始から6ヶ月が経過するかの、いずれか遅い日まで)はその建物を使用することが出来ます。被相続人(亡き夫)が居住建物を遺贈した場合や、反対の意思を表示した場合であっても同様で、最低6ヶ月間は住んでいた家に住み続けることが出来るます。

 参考:配偶者短期居住権|法務省

改正 民法の規定

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