1-5 民法改正で、瑕疵担保責任が契約不適合責任に変わります

瑕疵担保責任から、契約不適合責任へ

現行の民法では「瑕疵担保責任」ですが、改正民法では「契約不適合責任」と名称が変わり、現行の通説である「法定責任説(無過失責任)」を否定して、「契約責任説(債務不履行責任)」が採用されることになります。

その結果として、契約した時の内容が結果的に実現されない場合は、売主の債務不履行となり、債務不履行の一般原則が適用されることになります。また、従来は契約時点で買主が知っていた瑕疵については、瑕疵担保責任の対象外でしたが、法改正後は、買主が契約時に知っていた契約不適合(瑕疵)についても責任を追う可能性があります。

改正法適用後は、契約書で取決めをする条件が、今まで以上に重要になると考えられます。

いつから改正民法が適用されるのか?

改正民法の施行日が2020年4月1日です。
つまり、2020年3月31日までは、現行民法に基づいて作成された契約書を使用し、2020年4月1日以降に契約する場合は、改正民法に基づいて作成された契約書を使用することになります。

追完請求権の新設(改正民法562条

目的物の種類、品質または数量に関して、契約内容に適合しない時、買主は目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しを求めることが出来る権利のことです。売主としては、買主に不相当な負担を課すものでない時は、買主の請求とは異なる方法で追完をすることが出来ます。

従来も、契約書の特約上で付されることはありましたが、法定されました。

代金減額請求権の新設(改正民法563条

買主から相当な期間を定めて売主に対し、追完を催告し、その期間内に追完が為されない時に、不適合の程度に応じて、代金の減額を請求することが出来る権利です。

そもそも追完が出来ないか、売主が追完を明確に拒絶する意思を示している場合は、催告が不要になります。

契約解除権(改正民法415541542564条

債務不履行解除を定めた、改正民法415条、541条、542条、564条に従い、催告後、解除権を行使することが出来ます。相手方の帰責事由は不要です。

損害賠償請求権(改正民法564条

債務不履行による損害賠償を定めた、改正民法415条に従い、相手方に「帰責事由がある場合」に限り、損害賠償を請求することが出来ます。従来の瑕疵担保責任では「信頼利益」に限られていましたが、改正後は「履行利益」となりますので、損害賠償すべき範囲や額が従来よりも拡大する可能性があります。

追完請求権、代金減額請求権、契約解除権と併せて損害賠償請求を行うか、またはそれらが認められない場合でも要件を満たすことで損害賠償請求が可能になります。

権利行使の期間制限(改正民法566条

買主は、目的物の種類または品質に関して、契約内容に適合しない場合、その不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知する必要があります。

 ※売主が引渡しの時に不適合を知っているか、または重大な過失によって知らなかった場合、1年以内の定めは適用されません。

目的物の数量または権利に関して、契約内容に適合しない場合については、原則として、通常の消滅時効の定め(5年 or10年)が適用されます。

改正民法と異なる特約の有効性

契約不適合責任に関することは任意規定となっていますので、一般消費者間の契約であれば、改正民法の規定と異なる取決めをすることが可能です。

売主が宅建業者である場合は宅建業法40条の規制が掛かりますので、民法の規定と異なる取決めをすると、無効になる可能性があります。

改正 民法の規定

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