1-6 民法改正で、危険負担がどのように変わるのか?

危険負担とは

危険負担とは、売買契約成立後、物件の引渡しまでの間に、債務者(売主)に責任のない地震などの天災で、物件が滅失した場合に、対価的関係にある反対債務(代金の支払い)が消滅するか否かについての考え方です。債務者主義と、債権者主義があります。

【債務者主義】を取る場合、債務者が危険を負担します。つまり、物件引渡しに関しての債務者である売主が危険を負担することになるため、代金の支払い義務が消滅します。

【債権者主義】を取る場合、債権者が危険を負担します。つまり、物件引渡しに関しては債権者である買主が危険を負担することになるため、代金の支払い義務が存続します。

現行民法では、原則として債務者主義が取られており、不動産などの特定物の売買に関しては債権者主義が取られています。そのため、特約がついていなければ、引渡し前に建物が滅失した場合でも、買主は売買代金を支払わなければなりません。
それではあまりに不合理ということで、一般的には売買契約書の中で債務者主義にするという特約が付されています。

危険負担の内容がどのように変わるのか?

特定物の売買についての債権者主義の項目が削除されます。そのため、特定物の売買についても原則として債務者主義が適用されることになります。(民法536条
実際には、物件が滅失した時点で買主の代金支払い義務がなくなるのではなく、買主が売買契約を解除することで代金支払い義務がなくなります。

旧 民法の規定

第534条(債権者の危険負担)

 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。

 不特定物に関する契約については、第401条第2項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。

第535条(停止条件付双務契約における危険負担)

 前条の規定は、停止条件付双務契約の目的物が条件の成否が未定である間に滅失した場合には、適用しない。

 停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰することができない事由によって損傷したときは、その損傷は、債権者の負担に帰する。

 停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰すべき事由によって損傷した場合において、条件が成就したときは、債権者は、その選択に従い、契約の履行の請求又は解除権の行使をすることができる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。

第536条(債務者の危険負担等)

 前2条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。

 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

改正 民法の規定

第534条(債務者の危険負担)削除

第535条(停止条件付双務契約における危険負担)削除

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