2-1 アパートを定期借家契約での運用

賃貸事業を営むに当たって、大家さんの頭を悩ませる主な要因(リスク)は、
(1)空き部屋
(2)建物の修繕費
(3)賃料の滞納
(4)トラブルを起こす入居者

このうち、(3)と(4)については「定期借家契約」を結ぶことによって、ある程度のリスクを減らすことが出来ます。
普通賃貸借の場合、賃借人が賃料を滞納したり、騒音等のトラブルを起こしたりする場合でも、「すぐ出て行ってくれ」というわけにはいきません。 仮に契約条項に違反していても信頼関係が破壊されていない限りは無理なのです。
まずは、是正を求める通知をして、話し合いをして、それでも解決出来なければ、最終的には裁判を起こして、勝訴判決を勝ち取った上で、契約解除、強制執行をしなければなりませんので、手間も時間も掛かります。

「定期借家契約」の良い点は、とりあえず賃貸借期間が終了するまで我慢すれば、その後に再契約するかどうかは賃貸人の意思に委ねられるというところです。「普通借家契約」の場合、多少迷惑を蒙っていようと契約更新を余儀なくされるケースがありますが、「定期借家契約」の場合、確実に契約を終了させることが出来ます。賃貸人には再契約する義務がありませんので、不良入居者にはその時点で退去してもらうことが可能です。

 良い借主 → 再契約

 自分で利用したい → 再契約しない

 賃借人が賃料を滞納しがち → 再契約しない

 賃借人の迷惑(トラブル)行為 → 再契約しない

 賃貸事業を止めたい → 再契約しない

と選択することが出来る点です。

定期借家契約のメリット

・不良入居者(家賃の支払いを滞納しがちな人。周りの部屋に迷惑をかける人)がいたとしても、契約違反による契約解除を申し出るのは実務上、非常に困難だが、定期借家なら期間内だけ我慢して再契約をしなければ、そこで出て行ってもらえる。

・物件老朽化時における、面倒な立ち退き交渉が必要ない。立ち退き料も必要ないので、後、数年でアパートを建替えたいと思っている時に有用。

・一時的な転勤などの場合にも、持ち家を賃貸することができる。

定期借家契約のデメリット

・普通借家契約に比べると、契約上の手続きが多少増える。(契約書とは別書面で、更新がないこと等を説明しておく、退去日の1年前から6カ月前に退去通知を出す等)

・更新は出来ないので、賃貸借契約を続行する場合は再契約をしなければならない。宅建業者に頼む場合は、仲介手数料を再度支払う必要がある。

・更新が出来ないということで、賃借人に敬遠される可能性がある。近隣問題や滞納を起こさない賃借人であれば、再契約を保証するという内容にする等、対応が必要。

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