3-8 土地を購入したが、がけ条例の説明がなかった。

Q【買主】

買主です。

土地を購入しましたが、ハウスメーカーから「この土地はがけ条例の制限を受けるので、家を建築するためには、建築場所を数メートル後退させるか、安全な擁壁を建てる必要がある」と言われてしまいました。

敷地面積の減少や、擁壁のために増加する費用を考えると、どちらも不可能な選択肢です。

売主や仲介をした宅建業者からは、そのような規制があるとの説明はありませんでしたし、「がけ条例」自体の説明も一切ありませんでした。これは説明義務に違反しているのではないでしょうか?

損害賠償請求や、売買契約の解除は、認められるでしょうか?

崖条例
A

「がけ条例」に関する規制の説明ついては、重要事項として説明義務が規定されている宅建業法35条には列記されていません。

しかし、宅建業法35条に規定されている項目は最低限説明しなければならない項目とされており、それ以外の項目であっても、買主にとって購入の意思決定に影響を与える重要な事項であれば、宅建業者は買主に対して説明する義務があります。そして、「がけ条例」は建築に大きな影響を与えますので、一般的には重要な事項として解されています。

仲介業者に対する損害賠償請求の可否は?

過去の判例では、「がけ条例」の説明義務違反による損害賠償請求(追加建築費用、追加設計費用、擁壁建設費用等)が認められていますので、「がけ条例」に関する説明が無かったのであれば、仲介業者に対する損害賠償請求が認められる可能性は十分にあると考えられます。

まずは仲介業者が所属する団体、もしくは弁護士に相談してみるところから始めましょう

不動産の四方山話1-3『不動産会社の所属団体

売主に対する損害賠償請求または売買契約解除の可否は?

売主が宅建業者以外の者で、がけ条例の規制について知らなかった場合、告知義務違反は問えないと考えられますので、告知義務違反に基づく損害賠償請求は出来ないと考えられます。

ただし、売主が契約不適合責任を負う特約がついている場合、契約不適合責任に基づく追完請求や、代金減額請求、契約解除が認められる可能はあります。契約不適合責任を免責する特約がついているついている場合は、契約不適合責任に基づく請求は出来ません。

売主が宅建業者となる場合は、契約不適合責任を2年以上負う特約がついていると思いますので、通知期間内の請求であれば、追完請求や、代金減額請求、契約解除が認められる可能性があります。

契約不適合(がけ条例による影響)が軽微なものでない限り、買主は契約解除を主張することが出来ますが、軽微なものかどうかの判断には線引きがありませんので、どちらにしても売主や仲介業者と協議をして、対応を決めていく必要があります。

売買の基礎知識4-2『契約不適合に関する特約

不動産適正取引推進機構のHPへ
東京地裁 H28.11.18 がけ条例に違反することの説明義務を怠ったとして仲介業者に対する擁壁の築造費用の請求が認められた事例
東京地裁 H24.5.31 がけ条例の説明義務違反が認められ、追加工事費用分の損害賠償が認められた事例
東京地裁 H23.4.20 がけ条例が存在することの説明を受けなかったとして売買契約の解除は認められたが、道路造成工事の請負契約の解除は否定された事例

宅地建物取引業法

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