1-6 契約を解除したら、手付金を放棄して、更に違約金を支払うのか?

Q【買主】

土地の買主です。

土地を購入する売買契約を締結しましたが、決済までの期間に事情が変わり、土地を購入する必要が無くなってしまいました。

そのため、仲介業者に売買契約を解除したいと申し出しましたが、そうしたところ、仲介業者から「もう手付金の放棄だけでは解除できませんので、プラスして違約金も支払って下さい」と言われました。

決済前に売買契約を解除する時は、支払い済みの手付金を放棄すれば、それだけで良いのではないのでしょうか?

プラスして違約金が発生するものなのでしょうか?

解除金銭
A

売買契約を解約する時には、手付金の放棄+違約金が必要になるのか?

一般的な売買契約書を利用している場合、手付金は『解約手付』として扱われます。

そのため、手付解約ができる期限内かつ売主が契約の履行に着手するまでの間に、買主が手付解約を申し出た場合は、買主は支払い済み手付金を放棄するだけで、売買契約を解約することが出来ます。手付金の放棄とは別に、違約金や、損害賠償などを支払う必要はありません。

売買契約の内容によっては、手付金が『解約手付』の性質を持たないとされている場合もありますので、最初に売買契約書の特約の内容を確認するようにして下さい。

絵巻

手付放棄+違約金の支払いが必要になると考えられるケース

手付解約できる期限を過ぎてしまっている場合、または売主が履行に着手してしまっている場合は、買主は手付放棄による解約は出来ません。

その場合、一般的には、買主は支払い済みの手付金を売主から返金してもらって、代わりに違約金を支払うという内容の合意解約になりますが、例外として、売買契約書に「支払い済み手付金は違約金の一部に充当される」等のように特約されている場合は、手付金放棄+違約金の支払いが必要になるということも考えられます。

手付金の3つの性質

手付金には『解約手付』『証約手付』『違約手付』の3種類があり、それぞれ性質が異なります。

解約手付とは

手付金の授受により、当事者に解約権を留保させるものです。解約手付として手付金の授受が行われている場合には契約成立後であっても、一方の当事者だけの意思で契約解約ができます。
手付金が解約手付である場合には「売主からは買主から受領した手付金を返還した上で、同額を支払うこと」、「買主からは手付金を放棄すること」により、解約することが出来ます。その他に損害賠償を負う必要もありません。

当事者間で特段の取決めが無い場合、手付金は解約手付として扱われます。

証約手付とは

不動産売買が成立した証として、買主から売主に対して交付される手付金です。 契約の成立を明確に表すために支払いが行われます。

証約手付としての性質だけで、解約手付の性質を持たないと合意された場合、手付流しによる解約は出来ませんが、一般的な不動産売買契約で授受される手付金は、証約手付としての性質と、解約手付としての性質を持っています。

違約手付とは

当事者に契約違反(違約)があった場合に、損害賠償とは別に違約の「罰」として没収することができる手付金です。

売買の基礎知識 4-5『売買契約書の内容「手付解約特約とは?」

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