4-1 土地の売却を依頼したら、業者に安く買い取られ、高値で転売された

Q【売主】

土地の売主です。

私が所有している土地の売却を、宅建業者に依頼したところ「このご時勢だから、なかなか買手が現れないかもしれない。もし急いで売却する必要があるなら、時価よりも安くなるが、自分の会社で買っても良いよ」と言われました。

そのため、時価よりも低い価格で、宅建業者に土地を買い取ってもらいましたが、そのすぐ後に宅建業者がその土地を転売して、数百万円の転売利益を上げていたことが分かりました。時期を考えると、私から土地を買い取った時には、既に購入者を見つけていたのではないかと思います。

詐欺に当たると思いますが、どうにかして、転売で上げた利益を支払ってもらうことは出来ないのでしょうか?

買い叩き
A

媒介依頼を受けた不動産を宅建業者が買い取ることの是非

媒介依頼を受けた宅建業者は、宅建業法31条1項により、依頼者に対する信義誠実義務を負っていますので、『自らが買い取る合理的な根拠』がない限り、売買契約ではなく、媒介契約として取引をすべきと考えられています。

合理的な根拠とは、不動産広告を行っても購入希望者が見つからず、売主としては至急に売らなければならず、宅建業者に売却することのメリット・デメリットを売主が良く把握している場合等が当たると考えられます。

合理的な根拠がある場合は、宅建業者が買い取ることも許容されますが、合理的根拠がない場合は、売主が一度は売買価格に納得して宅建業者に売却を決意したとしても、宅建業法違反、または不法行為に該当するとして、宅建業者は転売利益と仲介手数料の差額相当の損害賠償責任を負う可能性があります。

宅建業者が転売で上げた利益を支払ってもらえるのか?

「宅建業者への不動産売却額と、宅建業者の転売利益の差額」、「宅建業者への売却日と、宅建業者が転売した時までの期間」、「物件の市場性」、「依頼者の事情」、「依頼者の理解度」等を総合的に斟酌して、宅建業者に不法行為があったと判断される場合、理論上は損害賠償が認められます。

ただし、実際の交渉はなかなか困難だと思います。裁判令を示す等して、宅建業者と交渉してみて、埒が明かない場合は、弁護士さんに相談される方が宜しいかと思います。

不動産適正取引推進機構のHPへ
福岡高裁H24.3.13 媒介契約を受けた場合、媒介契約によらずに売買契約によるには合理的根拠を具備する必要があるとした事例
不動産流通推進センターのHPへ
2016年10月掲載 媒介依頼を受けた不動産を、宅建業者が買い取り、転売することの是非

宅建業法の規定

刑法の規定

inserted by FC2 system