3-13 土砂災害警戒区域の説明義務違反

Q【買主】

土地の買主です。

仲介業者を通じて、一般の売主から、土地を購入しました。その後の調査で判明したのですが、土地が「土砂災害警戒区域」の中にあることが分かりました。

建築制限は無いとのことなので、家の建築には支障がないのですが、土砂災害に対する不安が残る物件ということに変わりはありません。

売買契約前には、売主や、仲介業者から「土砂災害警戒区域内である」との説明を受けなかったのですが、何か責任を追及することは出来るのでしょうか?

土砂災害警戒区域
A

まずは重要事項説明書の内容を確認

土砂災害警戒区域内か否かは、重要事項説明においての必須説明項目となっています。

そのため、重要事項説明書内には「内」か「外」かを記載する欄がありますので、まずは確認してみて下さい。

記載がない。もしくは、「外」に〇がついているようであれば、仲介業者の説明が間違っていると考えて良いと思います。

仲介業者の責任は?

土砂災害警戒区域の説明は、宅建業法 第35条1項14号宅建業法施行規則 第16条の4の3に規定されています。そのため、土砂災害警戒区域内か外かの説明が正確になされていない以上、仲介業者は宅建業法35条に違反すると考えられます。

説明義務違反となりますので、仲介業者に対しては債務不履行責任または、不法行為責任に基づいての損害賠償請求が可能であると考えられます。

実際の損害賠償額の算定は?

ケースbyケースになりますが、参考になる判例として、神戸地裁 平成28年9月29日があります。

土砂災害警戒区域内の中古住宅の売買契約(売買代金150万円)ですが、仲介業者は土砂災害警戒区域内の物件であると説明をしませんでした。裁判になった結果、裁判所は本件物件の客観的価値との差額分(土砂災害警戒区域外として算定した土地価格と、土砂災害警戒区域内として算定した土地価格の差額)として、70万円の損害賠償義務を認めました。買主が売買契約の成立自体を否定しなかったことから、売買契約に伴い発生した費用(仲介手数料や登記手続き費用)は損害に当たらないと判断されました。また、買主は建物をリフォームしていましたが、その費用についても損害には当たらないと判断されました。

和解の場合は別ですが、裁判を考える場合は、不動産鑑定士に依頼して不動産の客観的価値を求めることが必要になると思います。

不動産適正取引推進機構のHPへ
神戸地裁 H28.9.29 売買物件が土砂災害警戒区域内に存することの説明を怠った媒介業者に対する損害賠償請求が一部認められた事例

売買契約の解除が出来るか?

契約不適合責任(債務不履行責任)に基づいて、契約解除することが考えられますが、債務不履行の程度が軽微である時は契約解除することが出来ません。

土砂災害警戒区域内ということが、軽微な債務不履行に当たるかどうかについては判例等が見当たりませんので、残念ながら実際に裁判をやってみないと分からないでしょう。

宅地建物取引業法の規定

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