1-10 建築条件付き土地売買契約の解除

Q【買主】

建築条件付き土地売買契約を締結しました。売主業者から請負契約書にも署名を求められ、間取等の細かな条件を決めぬまま同日付で工事請負契約も締結しました。

その後、建物について協議する中で、他の業者に比べると建築費用が高くて予算をオーバーしてしまい、売主業者では私が望むような建物が建てられないことが分かりました。

そのため、土地売買契約と、工事請負契約を白紙解約したいと言ったところ、契約条件が満たされているので、解約する場合は手付放棄による解約になると言われました。

本当にそういうものでしょうか?

建築条件付き
A

建築条件付き土地売買とは

土地を売買する条件として、一定の期間内に土地の売主が指定する建築業者(通常は売主)と建物建築請負契約を締結することが入っている取引です。

停止条件(建物請負契約の締結と同時に土地の売買契約の効力が発生)と、解除条件(特定の期日までに建物請負契約が成立しない場合には土地の売買契約が解除される)の場合がありますが、土地の売買契約と、建物建築請負契約がセットになっているという意味では同じです。

一般的には、土地の売買契約から、3か月以内に建物建築請負契約を締結することが条件となっており、期限内に建物建築請負契約が成立しなかった場合は、土地の売買契約が白紙(土地の売買契約で支払った手付金が戻ってきます)になります。3か月というのは建物の設計協議をする時間です。

なお、建築条件付き土地売買は、独占禁止法で定める抱き合わせ販売の禁止に該当するという考え方もありましたが、今は幾つかの業界ルールをクリアしていれば、許容されうるものとして考えられています。

①建物建築請負契約を締結すべき期限(土地購入者が自己の希望する建物の設計協議をするために必要な相当の期間を経過した日以降に設定される期限)が定められていること。土地売買契約から概ね3か月程度。

②売主または売主の指定業者と建物請負契約が成立しない場合においては、土地売買契約が白紙解約になり、土地購入者が支払った金銭が返還されること。

③売主業者の広告上の表示内容

等が守られていれば、建築条件付土地売買契約は有効であると考えられます。

土地売買契約や建物建築請負契約を白紙解約することが出来るか?

建物建築請負契約を締結してしまっている場合、契約条件が満たされていますので、契約上の文言通りに取れば、買主は白紙解約することは出来ません。

ただし、土地の売買契約と同日に結ばれた建物建築請負契約が、設計協議をするために必要な相当期間と言えるのかどうかという点では甚だ疑問があります。仮に売主業者が提案する決まったプランの中からしか建築する建物を選べず、何も協議が出来なかったとすれば、実質的には建売住宅の青田売りであるとみなされ、それが宅建業法上の違法行為と認定されることもあります。

また、中部地方整備局が2016年3月23日、次の理由により、業者に指示処分を行ったという事例もあります。

「建物の工事請負契約の締結を停止条件とする建築条件付土地売買契約にあっては、工事請負契約の内容(金額も含む)が定まらないままに土地売買契約と同日に工事請負契約を締結すると、契約後に買主の希望する予算や間取りで建物が建築できないことが判明し、契約を解除しようとするときに、買主は工事請負契約の前払金を放棄し、土地売買契約の手付金を放棄しなければならず、損害を被ることとなる。被処分者(売主業者)は、買主と土地売買契約を建築条件付で締結し、同日付で買主との間で内容を十分に協議せず、内容が定まらないまま工事請負契約を締結し、当該土地売買契約の停止条件を成就させた。貴社の行為は、不当に土地売買契約の条件を成就せしめるものであり、業務に関し取引の公正を害する行為に該当し、取引の関係者に損害を与えるおそれが大であり、法第65条第1項第1号及び第2号に該当するものである。」

以上のことに当てはまる場合、売主業者は宅建業法違反になる恐れがありますので、交渉は可能であると考えられます。

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