2-9 中古住宅を購入したが、水道管が隣地を通って引き込まれていた

Q【買主】

買主です。

中古住宅を購入しましたが、地中にある水道管が隣地の敷地を経由して、引き込まれていることが分かりました。今のところ、隣地の方からは何も言われていませんが、将来的なトラブルを回避するために、公道から水道管を引き込みし直したいと考えています。

その引き込み工事代を、売主または仲介業者に請求することは出来るのでしょうか?

なお、水道管の経路については、仲介業者から、前面道路から引き込まれている旨の説明を受けていましたが、市の図面自体が間違っていたとのことで、そこまで責任を負えないといっています。売主については、相続した物件であり住んでいなかったため知らなかったとのことです。

このような場合、私が費用負担をして、引き込み工事をするしかないのでしょうか?

水道管
A

幾つかのケースに分けて検討していきます。

水道管の引き直し工事をする必要があるのか?

地中のこととはいえ、水道管が隣地の敷地を通っているということは、越境している状態になっているということです。

もし、今回購入した中古住宅が建築された時に、隣地住人との間で、「隣地の地中に水道管を通しても良い」という合意があるのであれば、原則として、引き込みし直す必要はありません。※隣地の人が第三者に土地を売ってしまった場合は別です。
また、地役権登記がついているような場合も、引き込みし直す必要はありません。※隣地の人が第三者に土地を売ってしまった場合も大丈夫です。

合意や地役権登記が無い場合であっても、新たな合意、例えば「水道管がダメになった時に会わせて引き込みをし直す」、「地中の利用料として年間賃料○円を支払う」等の合意を隣地住人と交わすことが出来れば、すぐに引き込み直す必要はありません。

もし裁判上で争う場合には、合意や地役権登記の有無、水道管がそのような経路になった経緯や経過年数、その他の事情も含めて判断されることになると考えられます。

売主への責任追求

売主が水道管の越境の事実を知らなかったということであれば、契約不適合責任(2020年3月末日までの契約であれば瑕疵担保責任)が追求できるかどうかという判断になります。

越境の事実は、目的物の品質に関して契約に適合していません(瑕疵がある)ので、契約不適合責任(隠れた瑕疵)に該当すると考えられますので、契約不適合責任(瑕疵担保責任)を追求できる期限内であれば、売主に対して、追完請求や、代金減額請求等を請求することが出来る可能性があります。売買契約書の特約で、売主の契約不適合責任(瑕疵担保責任)が免責されている場合、または請求できる期限が過ぎてしまっている場合は、請求することが出来ません。

売主が水道管の越境の事実を知っていて隠していた場合は、告知義務違反を問えると考えられますので、不法行為に基づく、損害賠償請求が認められる可能性があります。

仲介業者への責任追求

仲介業者としては、市の水道局の図面調査、現地調査などを実施し、その調査内容に基づいて説明を行っているならば、調査説明義務を果たしているものと考えられます。仲介業者には、現地を掘り起こして、水道管の配置が正しいか確認する義務まではありませんので、図面調査、現地調査が的確に行われているのであれば、業者の責任を追及するのは難しくなると考えられます。
もし、仲介業者が市役所での調査を行っておらず、水道管の経路を見落としたということであれば、工事費用について負担を求めることが出来ると考えられます。

責任追求が可能な場合、どの程度まで請求出来るのか?

原則としては、水道管の引き直し工事のために必要な費用(隣地敷地内の水道管の撤去、前面道路からの引き込み工事等)が上限となります。

売主、または仲介業者の責任追及が難しいような場合であれば、仲介業者に隣地の住人との合意形成に専門家として力を貸してもらえないか、お願いしてみるようにしましょう。

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