3-5 非現実的なシミュレーションの説明と、投資用マンションの購入
【買主】投資用マンションの買主です。
宅建業者から、投資用のワンルームマンションの購入を勧誘されました。
収支シミュレーションの表を提示してもらって説明を受けたところ、「家賃収入だけで金融機関への返済が可能で、持ち出しは殆どありません」、「投資用のマンションは売却するときも価格が殆ど下がりません」などの話があり、勧められるままにマンションの売買契約を締結してしまいました。
購入後、しばらく経ちましたが、思っていたような収入を得ることが出来なかったため、別の専門家に相談したところ、そもそも提示された収支シミュレーションが非現実的な値であり、またマンションの売買価格も、一般的な相場よりも、数割は高く購入させられたことが分かりました。
もし転売するとしても、買値よりかなり価格が下がってしまうだろうとのことです。
このままだと、破産も考えなければなりません。このような場合でも、売買契約を解除することは出来ないのでしょうか?
状況や証拠等によっては、解除できる可能性があります。
宅建業法に基づく契約解除が出来るかどうか?
宅建業法35条もしくは宅建業法47条の説明義務に違反する場合、売買契約の解除が認められる可能性があります。
ただし、この方法による場合は、原則として裁判によるか、弁護士の力を借りて和解に持ち込むかするしかないと考えられます。売主である宅建業者が、宅建協会または全日本不動産協会の所属会員の場合には、当該所属協会に相談したり、または行政(宅建業の所管課)の力を借りるか等の方法も考えられます。
買主自ら交渉することも出来ますが、素人であれば、おそらく言い包められますので、契約解除は認めてもらえないと思われます。
消費者契約法に基づく解除が出来るかどうか?
重要な事実についての不告知があった場合、消費者契約法4条2項や、8条を根拠に契約が解除できる場合があります。この方法による場合も、やはり裁判によるか弁護士の力を借りる必要があるでしょう。
クーリングオフが出来るかどうか?
以下の宅建業法上のクーリングオフの要件を満たしていれば、クーリングオフが可能です。
①売主が宅建業者で、買主が宅建業者ではない。
②宅建業者の事務所等(店舗、自分が業者を呼んだ場合の自宅等)以外の場所で買受けの申込み、または契約締結をしたこと。
③決済が終わっていないこと。
④クーリングオフの説明を受けてから8日以内。
クーリングオフが出来る場合は、急いで、内容証明郵便でクーリングオフの通知を出しましょう。クーリングオフとなった場合、それまでに支払った金銭は戻ってきます。
東京地裁 R2.2.18 | 収益物件の賃貸借契約や建物の状況に関して不正確な情報を提供した媒介業者に債務不履行責任が認められた事例 |
---|---|
東京地裁 H24.3.27 | 売主業者の不利益事実の告知により事実誤認して投資用マンションの売買契約を締結した事例 |
東京地裁 H27.3.18 | 購入させた媒介業者の不法行為が認められた事例 |