1-4 賃貸借契約を中途解約した時の違約金
【賃借人】借主です。
5年間の期間で、賃貸事務所を借りましたが、業績が良くないため、契約締結から2年経った時に賃貸借契約の解除を申し出をしました。
そうしたところ、貸主から「契約解除をしていただくのは構いませんが、5年間の約束で契約したのだから、残り3年間分の賃料相当額を違約金として請求することになります」と言われてしまいました。
この貸主の主張は正しいのでしょうか?
本当に残り期間分の賃料を支払わないと、賃貸借契約を解除出来ないのでしょうか?
賃貸借契約書の中に、賃借人が中途解約した場合の取り決めがありますので、原則的にはその内容に従うことになります。
一般的な賃貸借契約書の内容
一般的な賃貸借契約書では、賃借人からの解約は「1ヶ月~6ヶ月前の通知にて解約できる」旨の記載があると思いますので、その期間を守って通知をした場合、違約金は掛かりません。事前通知をしていない場合で、すぐに解約したい場合は、その通知期間が過ぎるまでの賃料を支払えば解約できるというのが一般的です。
賃貸借契約書に中途解約条項がない場合
賃貸借契約の中に、中途解約の条項が含まれていない場合、または中途解約の条項に「残り期間分の賃料を違約金として貸主に支払う」旨の内容が記載されている場合は、残り期間分の賃料相当額を違約金として、まるまる請求されることもありますが、裁判上では、以下の事情の複合的な判断によって、公序良俗違反として賃貸人の主張が認められないことがあります。
・賃借人の解約は、賃貸人が賃貸借期間に予定していた賃料収入の減少を及ぼすもので、賃貸借契約の違約金条項は、このような賃貸人の損害を補填しうる方法を予定するものと解されている。
・賃貸人が早期に次の賃借人を確保した場合には、事実上賃料の二重取りに近い結果になる。
・民法617条で期間の定めのない賃貸借契約の場合、解約申し入れから3ヶ月で賃貸借契約が終了すると定められている。
・居住用建物の場合は、消費者契約法の適用があり、民法より義務が重いとその分については無効にされる。
賃貸借契約の内容や事情によって異なりますが、居住用では1ヶ月~3ヶ月。事業用では1年分くらいまでが認められそうな範囲ではないかと考えられます。
2016年12月掲載 | 賃借人が中途解約した場合の違約金条項の有効性 |
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東京地裁H8.8.22 | 事業用:賃貸借期間内に賃借人が解約した場合の違約金条項の効力 |
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東京簡裁H21.8.7 | 居住用:中途解約違約金特約が修正された事例 |
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中途解約の場合の残存期間の賃料等を違約金とする特約 |