3-2 償却期間が終わっていることを理由に、賃借人が原状回復費用の支払いを拒否。

Q【賃貸人】

賃貸アパートの大家をしています。

賃貸借期間が満了し、借主が退去することになりましたが、壁紙(クロス)にマジックで落書きしてありました。そのままでは次の人に貸し出すことが出来ませんので、借主に対して、壁紙の張替え費用を請求することにしましたが、借主から「国土交通省の原状回復ガイドラインに、壁紙は6年で減価償却が終わるとの記載がある。自分は6年間住んでいたので費用負担は出来ない」と言われました。

普通に使用していてくれたら、まだ壁紙を張り替えずに十分使用できたと思います。まだ使える壁紙を故意に汚損された場合にも、6年経過していたら何も請求出来ないのですか?

原状回復
A

国土交通省が発行している『原状回復ガイドライン 再改定版』によると、壁紙の減価償却は6年経過で1円になると記載されています。

ただし、だからと言って、必ずしも賃貸人の請求が認められないというわけではありません。『原状回復ガイドライン』にも記載がありますが、賃借人は賃貸借契約期間中は善管注意義務(善良なる管理者としての注意義務)を負っていますので、仮に6年以上経過している(償却期間が過ぎている)壁紙であっても、故意に毀損、汚損した場合は、責任を負うことがあります。

壁紙そのもの自体は、減価償却が終わっているとしても、壁紙を張り替えるための工事費用や人件費、または落書きを消す為のクリーニング代などについては、賃借人に請求できる可能性があります。最近の裁判例では、同様の事例において、壁紙の張替え費用の半分まで認めたものもあります。

不動産適正取引推進機構のHPへ
東京地裁H28.12.20 耐用年数を経過したクロスの原状回復費用の一部が認められた事例
国土交通省のHPへ
原状回復ガイドライン再改定版
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