4-1 前の借主が自殺していたことの説明がなかった

Q【賃借人】

賃貸アパートの借主です。

賃貸借契約を締結し、引っ越してから、しばらくして同じアパートに住む人が、私の部屋の前の住人が部屋の中で首吊り自殺していたことを教えてくれました。

もし入居前に仲介業者からその説明を聞いていたら、賃貸借契約を締結することはありませんでした。

これは説明義務違反に当たるのではないでしょうか? 損害賠償を請求することは出来るのでしょうか?

事故物件
A

前の入居者の自殺があってから、相当の年数が経っていないようであれば、賃貸人、もしくは仲介業者に損害賠償等を請求できる可能性は高いと考えられます。
貸室内での自殺や殺人事件は、一般的に心理的瑕疵と言われ、その事実を知っている賃貸人や仲介業者には、賃借人に説明する義務があるからです。

賃貸人が仲介業者に自殺の事実を告げておらず、仲介業者がそのことを知り得なかった場合は、仲介業者の責任を追及するのは難しくなります。

心理的瑕疵に該当するか否かの判断

(1)自殺からの経過年数
自殺事故が10年以上前であれば、心理的瑕疵と認定された判例は無いようです。自殺事故が2年以内なら、心理的瑕疵に該当すると思って良いでしょう。
また、自殺事故の後、誰かが1サイクル(2年以上)を平穏無事に借りている事情がある場合、心理的瑕疵が認定されづらくなります。

(2)周囲の人が、どの程度、自殺のことを知っているか。
近所の人が誰も知らなければ、瑕疵の程度は低くなります。周囲で頻繁に噂に上がっていたり、ニュースで大々的に放映されていたりすると、瑕疵の程度が上がるようです。

(3)自殺の場所や態様
賃貸の場合、貸室の外で自殺があった場合は、瑕疵と認定されない可能性が高いと言えます。一方、貸室の中で自殺を図り、その後、病院で亡くなったとしても心理的瑕疵と認定される場合があります。

(4)借主の態様
家族で住む用か、単身者で住む用か、事業に使用するのか等。一般的には、家族用だと心理的瑕疵が認定されやすくなります。

以上を総合考慮し、心理的瑕疵に当たる場合は損害賠償が可能であると考えられます。心理的瑕疵に当たりそうもない場合は、損害賠償はすっぱり諦めましょう。借りる前に確認しておかなかった自分にも、落ち度があるのです。

説明義務違反かどうかの判断

2021年10月8日、不動産取引における心理的瑕疵に関するガイドラインが策定されました。ガイドラインによれば、心理的瑕疵に該当する場合、概ね3年程の告知を要すことになっています。

 参考:不動産取引における心理的瑕疵に関するガイドライン | 国土交通省

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大阪高裁H26.9.18 自殺の不告知は不法行為に該当する
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