2-4 ビルが競売され、落札者から立ち退きを請求された。

Q【賃借人】

借主です。

ビルの一室を事務所として借りていましたが、ある日、ビルを競売で落札したという人から、すぐに立ち退いて下さいと請求が来ました。

正式に賃貸借契約を締結してから物件を借りていても、落札者から請求を受けたら、すぐに立ち退かなければならないのでしょうか?

法律的に立ち退かなければならないと決められているのだとしたら、貸主に預けていた敷金はどうなるのでしょうか?

落札者に対しては、引越し費用や、立ち退き料を請求しても構わないものでしょうか? 

競売
A

ビルに対する抵当権がいつ登記されたのか、抵当権が実行された競売の差押登記がいつ付与されのかによって、借主の立場は大きく変わります。

日本の法律の基本的な考えとしては、権利の優先順位は、各々の権利が対抗要件を備えた順位で決まりますので、場合分けして考察していきましょう。

賃貸借契約を締結し、貸室の引渡しを受けてから、抵当権が登記された場合

賃借権の対抗要件が先に備えられているため、その後に付された抵当権の実行により、ビルが競落され、落札者から立ち退き請求を受けたとしても、借主は退去する必要はありません。
今までの賃貸借契約が継続されますので、競落人が貸主の立場を引き継ぎ、借主は部屋の使用を続けることが出来ます。また、その後に退去することになった場合は、貸主の立場を引き継いだ競落人に対して、敷金返還を求めることが出来ます。

なお、貸室の引渡し前であったとしても、賃借権の登記が、抵当権の登記より先に付されている場合は、賃借権の対抗要件を満たしますので、同じく退去する必要はありません。

抵当権の設定後に、賃貸借契約を締結し、使用を開始した場合

残念ですが、競落人から立ち退き請求を受けた場合、立ち退く必要があります。ただし賃料相当額を支払い続けることによって、6ヶ月間の明け渡し猶予期間をもらえますので、その間に出て行く準備を整えることになります。

競落人に、引越料や立ち退き料を求めることは出来ません。また、店舗などの賃貸で内装にお金を掛けていた場合の費用や、敷金の返還については、元々の貸主に請求することになりますが、競売に掛かるような人はお金を持っていないと思いますので、おそらくは泣き寝入りすることになります。

なお、競落人との交渉によって、新たに賃貸借契約を締結することが出来た場合は、退去する必要はありませんが、新たな契約となりますので、敷金や礼金を賃貸人となる競落人に対して、新たに支払う必要があります。

抵当権が実行され競売開始決定の登記設定後に、賃貸借契約を締結した場合

残念ですが、競落人には一切対抗できません。明け渡しの猶予期間もありませんので、すぐに立ち退かざるを得ません。

競落人に、引越料や立ち退き料を求めることも出来ません。また、店舗などの賃貸で、内装にお金を掛けていた場合の費用や、敷金の返還については、元々の貸主に請求することになりますが、競売に掛かるような人はお金を持っていないと思いますので、おそらくは泣き寝入りすることになります。

なお、競落人との交渉によって、新たに賃貸借契約を締結することが出来た場合は、退去する必要はありませんが、新たな契約となりますので、敷金や礼金を賃貸人となる競落人に対して、新たに支払う必要があります。

 ※賃貸物件を建築する時には銀行融資を受けることが多い為、抵当権がついている物件は多くあります。競売に掛かる物件は多くありませんが、最悪はその可能性もあると考慮しておきましょう。競売開始の差押登記がついている物件は多くありませんが、絶対に借りてはなりません。店舗や事務所を賃借する場合、被害が尋常ではなくなります。賃貸借契約の締結時に、仲介業者から、登記簿の内容について説明がありますので必ずチェックするようにしましょう。
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