3-6 一戸建てを貸していたら庭木を枯らされた。借主の原状回復義務は?
【賃貸人】一戸建て物件の貸主です。
一戸建ての賃貸借契約を締結して、約10年間貸していました。今回、借主から退去するという連絡をもらいましたので、現地の確認に行きましたが、庭のあまりの変わりようにビックリしました。全く管理がなされておらず、大事な樹木や芝生が枯れていて、雑草が伸び放題に生い茂っていたのです。
借主は、「何も言われていなかったので草取りも剪定も一切していない」、「樹木が枯れたことについて自分に責任はない」、「自分は建物を借りただけなので、原状回復義務はない」と、悪びれる様子もありません。
一戸建て物件を賃借した場合、庭のことについては、原状回復義務として損害賠償請求が出来ないのでしょうか?
なお、賃貸借契約書には庭の管理についての特約は何もついていません。
損害賠償請求が可能かどうかは、賃借人に賃貸借契約上の善管注意義務(善良なる管理者としての注意義務)違反があったかどうかで判断されることになります。
善管注意義務違反がある場合、賃貸人からの損害賠償請求が認められることになりますが、善管注意義務違反がない場合、賃貸借契約書に特約が付記されていなければ、損害賠償請求は出来ません。
『東京簡易裁判所 平成21年5月8日』の判例では、
(1)草取りについては、一般的な庭の管理であるとして、借主に善管注意義務違反があると認められました。
(2)樹木の剪定、養生には一定の知識や経験がいることから、借主に善管注意義務違反がないとされました。
(3)ただし、木が病気などで枯れ始めた場合、借主は貸主に通知する義務があったとされ、通知をしていなかった借主には善管注意義務違反があるとされました。
(4)借主は善管注意義務違反があるので、貸主に6万円を支払うよう、判決が下されました。
なお、賃借人は裁判で「建物を借りたのであって、庭は借りていない」と抗弁しましたが通りませんでした。
2019年4月掲載 | 一戸建ての賃借人は庭の植栽の手入れをする義務があるか |
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2009年5月8日判決 | 庭修復費用請求事件 |
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