5-5 借主が家賃を滞納し始めた時の対応

Q【賃貸人】

賃貸アパートの貸主です。

賃貸借契約中に、借主が家賃の滞納を始めましたので、管理業者を通して何度か催促してみましたが、借主は「払うつもりはあるがお金がないので待って欲しい」と半ば逆切れして言ってきています。

このまま滞納が続くと非常に困りますが、今後、どのように対応すれば良いのでしょうか?
出来れば、借主には滞納家賃を支払ってもらった後に、立ち退いてもらいたいと思っています。

滞納
A

賃借人に滞納家賃を支払うつもり(予定)が本当にあるのか、ないのかで対応を変える必要があります。

賃借人に、滞納家賃を支払うつもり(予定)がないように見える場合

絵巻

まず、賃借人本人に支払期限を記載した書面で請求します。
それでも支払いが無い場合、連帯保証人がいれば、その方にも事情を伝えて請求します。賃借人が「連帯保証人に連絡をしないで欲しい」と言うかもしれませんが、連帯保証人に連絡するのに、賃借人の同意は不要です。

連帯保証人が滞納家賃を支払ってくれれば、一応はそれで解決ですが、もし連帯保証人がいないか、連帯保証人がいても資力がなくて支払えない場合は、立ち退き交渉を考えていくことになります。

※民法改正後の連帯保証人(個人根保証)については、極度額が設けられています。一度、連帯保証人に支払ってもらうと、その分だけ極度額が減っていきますので注意が必要です。

立ち退き交渉にあたっては、賃借人がすぐに引っ越してさえくれれば、滞納家賃を免除するくらいの心構えが必要です。なぜならば、滞納家賃が数ヶ月溜まってしまった後に、賃借人が全額を返済出来る可能性は極めて低いからです。

返済する可能性がないにも関わらず、ずるずると貸室に居座り続けられたら、滞納家賃が回収できないだけでなく、今後の家賃も入ってこないという負の連鎖に陥ります。もし賃借人が「引っ越し料を用意できない」と言うようなら、賃貸人側で引越し料を負担してでも出て行ってもらった方が、感情面はともかくとして、金銭面では得ということになります。

合計で6ヶ月分の家賃くらいの損失で済めば、かなり上手く損切り出来たと言えるでしょう。

「何で滞納する人間に、引っ越し代までやらなきゃならないんだ!」

 という金銭面より、感情面を優先する方は、弁護士に依頼して裁判を起こすのが良いでしょう。

裁判所に賃貸借契約の解除を認めてもらい、その後、明け渡しの強制執行に移ります。なお、不動産賃貸借の先取特権に基づき借主が残置した家財道具類の競売申立てを行っておくと、未払賃料債権の回収が望めるだけでなく、残地物の処分もついでに行えます。

※滞納の経緯にもよりますが、およそ3ヵ月以上の滞納があれば、契約解除や明け渡し請求が認められやすくなります。

※弁護士へ依頼すると、着手金等のお金が掛かります。ケースによって、10万円〜100万円くらい掛かります。滞納分も取りっぱぐれる可能性が高いので、追い出しは出来ますが被害は甚大になります。

賃借人に、滞納家賃を支払うつもり(予定)があるように見える場合

もし賃借人が、不慮の事故等にあって、やむなく家賃の滞納を始めてしまったが、滞納家賃を支払おうという気持ちが見える場合の対応です。

お互い人間なので、1ヶ月の滞納で、すぐに追い出しに掛かるというのも酷な話です。賃借人の事情を聞いて、滞納分を分割払いに出来るかどうか等の支払い計画を協議しましょう。賃借人に病気や失業などの事情がある場合、生活保護などを受けられる可能性もあります。

ただし、賃借人がどうあっても家賃を払えそうもない場合、賃貸事業者(経営者)の判断として、アパートから出て行ってもらうか否かを決定することになります。

賃貸業は立派な事業です。経営者として、損切りの決断をしなければならない場合があることも念頭に置いておきましょう。

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