1-3 隣の住人の柵が自分の敷地へ越境しているが、撤去を求められるか?

Q

隣地との境界線を調査する機会があったのですが、調査の結果、隣地の住人が作った柵が私の土地の方へ数十センチくらい越境していることが分かりました。

いつ頃に柵が出来て、いつから越境されていたのかは分かりませんが、このままでは将来的に家を売却する時の障害になると、知り合いの方から聞きました。

隣地の住人に対して、すぐに柵を撤去するよう請求することは出来ますか?

柵
A

隣地住人に柵の撤去を請求できるか?

隣地の柵が、自己所有地に越境していることに間違いがないというのであれば、それを是正するよう請求することは出来ます。しかし、状況によっては、慎重に交渉に臨んだ方が良いと思われます。

なぜ、交渉を慎重にした方が良いのか?

民法162条によれば、他人の物であっても、善意無過失で10年もしくは、悪意でも20年の間、平穏、公然と占有していれば、時効により取得したと主張が出来ますので、隣地住人に対していきなり「越境しているから柵を取り壊せ!」と喧嘩ごしに言い放ってしまった場合、隣地の方も反発し「既に時効取得している」と主張してくる可能性があります。

そうなると、非常に面倒です。土地を取られてしまう可能性もありますし、隣人との関係が悪化し、越境解決のための話が全く進まなくなってしまう恐れがあります。

実務的な交渉

トラブルの発生を避ける為には、隣人の負担を減らす方法の提案、例えば「隣人が柵を作り替える時には後退するものとする。それまでは越境部分を無償で貸すこととする」という旨の合意書を作成する方法があります。

もともと、越境されていることに気がつかなかったくらいの場所なので、急いで返してもらう必然性は低いと思われます。隣人が柵を作り直す時にその合意に従ってくれれば良いし、従ってくれない場合には、合意内容に基づいて、使用貸借契約を解除すれば良いということになります。
占有者に所有の意思がないと、取得時効は成立しませんので、賃貸借または使用貸借の合意書を作成しておけば、取得時効を主張される可能性を減らすことが出来ます。

なお、すぐに家を売却したいという事情がある場合は、第一には、隣人に事情を説明してすぐに柵を撤去してもらうこと。次点の方策は、上記合意書を作成して、買主となる人に合意書の内容を引き継ぐこととなります。

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