1-8 近所の人から、2項道路のセットバック部分を使うなと言われている

Q

自宅の前の道路は建築基準法上の2項道路になっており、道路に接している住人は、道路幅を4mにするよう、それぞれセットバック(敷地後退)しています。

しかし、一番入口側で、2項道路と公道の両方に接している一人だけが「自分がセットバックした部分は、自分の私有地なので通行するな」「もし通行するならば使用料を払ってもらう」と主張して、自動車の通行を妨害してきます。

その人がセットバックした部分を通行しなければ、自動車が公道に出ることが出来ないのですが、そんな個人の我がままが許されるのでしょうか?

通行
A

セットバックとは?

建物の敷地となる土地が接している道路が、建築基準法上の2項道路(4m未満の道路)に該当する場合、隣接している住人らは道路幅員が4m以上となるように、各々セットバック(敷地後退)しなければなりません。セットバックして、道路を広げることにより、隣接敷地に建築する許可が下りるようになります。

セットバックには、道路幅員を確保することで、災害時の避難路として活用することや、消防活動を円滑に行えるようにする目的があります。

他人のセットバック部分を通行できるのか?

セットバックした部分は、見かけ上は普通の道路のようになりますが、私有地であることに変わりはありません。セットバックすることによって、建築を許可されているのだからといっても、所有権を持たない他人が自由にセットバック部分を使用出来るようになるわけではないのです。

ただし、実務上の話としては、セットバック部分を通行されて、文句を言う所有者ばかりではありませんので、通常の道路のように使えてしまうこともあります。

所有者がセットバック部分に掛けることの出来る制限

セットバック部分の所有者が、他人の通行を妨げられるかどうかについて、一般的には、徒歩による通行までは妨げることが出来ないと考えられています。

一方、自動車による通行については、自動車の通行を望む人が日常生活に不可欠な利益を有するか否か、過去の利用経緯等から、利用制限を掛けられるかどうかが判断されます。そのため、自動車での通行は裁判で争ったとしても、許可されないことがあります。

また、所有者がセットバック部分に、柵や壁などの固定物を配置することは禁じられています。行政が建築確認を下ろすためにセットバックを課す意味は、救急車両が通れるするようにする等の目的があるためです。せっかく広げた幅員を狭くする行為は許されません。
ただし、持ち運びできる植木鉢や、駐車などによる通行妨害については、行政によって判断が分かれることもありますので、お住まいの行政に確認する必要があります。

不動産適正取引推進機構のHPへ
東京地裁 H31.3.15 工事車両の通行を妨害した行為は不法行為にあたるとして、建築主が求めた損害賠償請求が認容された事例
大阪高裁 H26.12.19 工作物の妨害排除請求が認められた事例
東京地裁 H22.3.23 自動車通行の禁止請求
東京地裁 H21.4.28 自動車通行、上下水道の使用が不法行為に当たるとされた事例』
東京地裁 H19.2.13 私道所有者への鉄柱の撤去請求
東京地裁 H19.2.2 通行禁止請求が棄却された事例
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