6-1 不動産取引に適用される法律
宅地建物取引業法
『宅地建物取引業法』は、宅地建物取引業において適用される「特別法」です。
宅建業者(不動産会社)の免許制度、宅建業者の義務、宅建業者の禁止行為、保証協会の制度、行政指導、罰則などが規定されており、主に宅建業者を規制するための法律となっています。
不動産の売買契約では、「一般法」である民法も適用されますが、民法と『宅建業法』が競合する場合、特別法である『宅建業法』の条項が優先されます。
①宅建業者を規制するための法律なので、仲介業者の入らない一般人同士の取引には原則として適用がありません。
②取引の対象物件が【宅地】または【建物】で、なおかつ【宅地建物取引業】に該当する場合のみ、宅建業法の適用があります。それ以外の不動産取引には、仮に宅建業者が取引に関わっていても、宅地建物取引業法の適用がありません。
例えば「宅地に当たらない農地等の売買」、「宅建業者による賃貸マンションの管理」、「宅建業者が貸主となる賃貸借契約」、「個人間同士の売買」には適用されないということになります。
業者の役立ちメモ2-9『農地売買の仲介をする時に重説は必要か?』
業者の役立ちメモ3-2『農地売買の仲介手数料』
建物の敷地に供せられる土地。もしくは用途地域内の土地で、道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外の土地が宅地になります。
つまり、市街化区域内であれば、ほぼほぼ宅地に該当します。現況が畑でも宅地です。市街化調整区域の場合は用途地域がありませんので、畑などは宅地になりません。
宅建業法には特段の定義がありませんので、建築基準法や登記法などの建物の定義から判断します。土地に定着しているか、壁や屋根や入口があるか、建物登記があるかなどから総合的な判断になります。
宅地もしくは建物の売買、交換の当事者。宅地もしくは建物の売買、交換、貸借の代理、媒介を業として行うもの。
宅地の定義に当てはまらない場合も、売主や買主、仲介業者が、宅地であるという認識で売買契約等を行うと、宅地建物取引業に該当する場合があります。
民法
『民法』は、不動産の売買に適用される基本的な法律です。
事業者が取引の当事者となる場合は特別法である『消費者契約法』も適用されますが、『消費者契約法』に規定の無いことは『民法』が適用されます。
商人同士の取引の場合は特別法である『商法』も適用されますが、『商法』に規定の無いことは『民法』が適用されます。
宅建業者が取引に関わる場合は特別法である『宅建業法』と『消費者契約法』が適用されますが、特別法に規定のない事項は一般法である『民法』の規定が適用されます。
特筆すべきは、『民法』の条項は基本的に任意規定となっていることです。
売買契約書で当事者の合意が為されれば、民法の規定よりも当事者の合意を優先させることが可能なので、他の法律や公序良俗に反しない限りは、自由な取り決めが可能となっています。
不動産売買については、民法 第3編 第2章 第3節の555条から、586条までの範囲で定められていますが、その他にも損害賠償の条項などが適用されます。
民法については、債権法の関係が2020年4月1日に改正されています。
改正民法 目次『改正民法まとめ』
参考:改正前民法(~2020.3.31~)|e-Gov法令検索
消費者契約法
『消費者契約法』は、消費者と事業者との間の不動産売買(賃貸)契約で適用される「特別法」です。
不動産売買(賃貸)契約には、「一般法」である民法も適用されますが、民法と『消費者契約法』が競合する場合、特別法である『消費者契約法』の条項が優先されます。
『消費者契約法』は、事業者より、取引の情報力で劣る消費者を保護するための法律です。
消費者に有利な条項が組み込まれているだけでなく、当事者の合意よりも法律が優先する強行規定となっているため、売買契約書などで、消費者契約法の条項と異なる特約をしてしまった場合であっても、消費者は法律が優先することを主張することが出来ます。
消費者契約法によれば、事業者とは、法人、団体、事業のために契約の当事者となる個人(企業、地方公共団体、PTA、弁護士などの士業、個人事業主、etc)
個人であっても、事業目的の場合は事業者扱いとなることに注意が必要です。
前段で定義した事業者以外の者が、消費者となります。
不動産売買契約に特に関係がある項目は、消費者契約法 第4条、第8条、第10条です。
第4条では、事業者の告知義務に関して規定されており、重要な事項について虚偽の説明があれば契約を解除できます。
第8条では、事業者の損害賠償義務に関して規定されており、損害賠償の特約に関してあまりに消費者に不利なものは無効になると規定されています。
第10条では、法律上の任意規定や一般法理と比べて、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する特約は、無効になると規定されています。
消費者の立場からすれば、消費者契約法が救いになることがあります。逆に、事業者の立場からすると、契約自由の原則が通用しない場合がありますので注意が必要となります。