4-2 売買契約書の内容「契約不適合に関する特約」

契約不適合責任

『契約不適合に関する特約』は、売買契約後に、契約内容に適合しない状況(雨漏りや、法令上の建築制限等)が発見された時、買主が売主に対してどういった請求が出来るかの取り決めです。

売主、買主の立場によっては、当事者間の合意よりも、法律の規定が優先されることがありますので、特約を決めるに際しては多少の注意が必要です。

民法が適用されるケース

 売主:消費者
 買主:消費者
 適用法令:民法562条~566条、572条、541条、542条、415条
 特約で変更可能か:

民法は、その殆どが強行法規ではないため、当事者の合意によって、民法とは異なる取り決めをすることが可能です。契約不適合責任を一切負わないというような特約(免責特約)も可能ですし、ある部分に限定した契約不適合責任だけを負うというような特約も可能です。

ただし、免責特約をつけたとしても、民法第572条により、売主が知りながら買主に告げなかった契約不適合については、特約の対象外となります。

また、契約不適合発見時の通知期間について、民法では契約不適合を知ってから1年間となっていますが、これについても合意による特約が可能です。売主と買主の事情にもよりますが、免責、3か月間、6か月間くらいでつけておくケースが多いように感じます。

なお、契約不適合に関する特約を全くつけない場合は、民法の条項がそのまま適用されます。

宅建業法が適用されるケース

 売主:宅建業者
 買主:宅建業者以外の商人・事業者・消費者
 適用法令:宅建業法40条。(商法526条。民法562条~566条、572条、541条、542条、415条)
 契約で変更可能か:軽減するのは不可

宅建業者が売主となる場合は、8種規制のうちの一つである宅建業法40条により、種類又は品質に関しての契約不適合について、引渡しから2年以上の通知期間を設ける特約以外は無効になります。
契約不適合の発見から2年間ではなく、引渡しから2年間以上になります。また、宅建業法は強行法規であるため、当事者間の合意があっても、宅建業者に有利となるような特約をつけることは出来ません。

特約が無効になってしまった場合、または最初から特約を付加しなかった場合、買主が消費者または商人以外の事業者であれば、民法の規定が適用されますので、種類又は品質に関しての契約不適合については、買主が契約不適合を知ってから1年間は契約不適合責任を請求することができます。

買主が商人の場合であれば、商法526条が適用されますので、引渡し時の検査で分からない種類、品質又は数量に関する契約不適合については、6ヶ月以内であれば請求することができます。

業者の役立ちメモ1-1『宅建業者が売主となる場合の8種規制

消費者契約法が適用されるケース

 売主:宅建業者以外の商人・事業者
 買主:消費者
 適用法令:消費者契約法8条、10条。(民法562条~566条、572条、541条、542条、415条)
 契約で変更可能か:可。ただし一定以上の変更は無効となる

消費者契約法は、事業者・消費者間で行われる契約で適用される法令です。

消費者契約法が適用される場合、契約不適合責任を一切負わないとする特約は消費者契約法第8条1項の規定により無効になると考えられます。
また、旧民法下での判例では、消費者契約法第10条に反するということで、3ヵ月の期間だけ瑕疵担保責任を負うとした特約が無効にされていますので、契約不適合責任についても、通知期間をあまり短くしてしまうと無効とされる可能性があります。

具体的に何ヶ月なら有効かという判例は未だにありませんが、民法による1年くらいで特約しておいた方がベターでしょう。

商法が適用されるケース

 売主:宅建業者以外の商人
 買主:商人
 または
 売主:宅建業者
 買主:宅建業者
 適用法令:商法526条
 契約で変更可能か:

商法は、商人間の契約で適用されますが、商法526条は強行規定ではないため、特約により変更は可能です。特約があればその内容に従い、特約がない場合は、商法どおり、引渡し時の検査で分からない種類、品質又は数量に関する契約不適合については、6ヶ月まで請求できるということになります。

宅建業者間の売買では、宅建業法78条により、宅建業法40条が適用除外となるため、商法の規定が適用されます。

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)が適用されるケース

 売主:誰でも
 買主:誰でも
 物件:新築住宅
 適用法令:品確法95条
 契約で変更可能か:軽減するのは不可。

品確法95条により、新築住宅の「構造耐力上主要な部分等」の瑕疵ついて、売主は、住宅を引き渡した時から10年間、担保する責任を負います。
契約内容によって、瑕疵担保責任を負う期間を20年以内に延長することができますが、免除または短縮することは出来ません。

不動産流通推進センターのHPへ
2008年6月掲載 新築住宅の一般ユーザーからの買取り再販の場合の品確法上の瑕疵担保責任

改正民法の規定

宅建業法の規定

消費者契約法の規定

商法の規定

品確法の規定

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