4-4 売買契約書の内容「危険負担特約」

危険負担

不動産の売買契約を締結してから、物件の引渡しが行われる(決済)までは、ある程度の期間が空くことが普通です。
しかし、もしもこの期間中に、台風や地震などの天災で物件が一部壊れてしまった場合、または放火魔の放火による火災で建物が全焼してしまった場合、売買契約の効力は一体どうなってしまうのでしょうか?

買主は、売買代金を支払わずに、売買契約の解除を主張出来るでしょうか?

買主は、売主に破損した建物の修繕を請求できるのでしょうか?

それとも、買主は何も請求することが出来ず、売主に売買代金の残額を支払わなければならないのでしょうか?

そのことについて、売主と買主の間であらかじめ合意しておくのが、『危険負担特約』というわけです。

旧民法下(~2020.3.31)の規定

旧民法では、不動産等の特定物の売買の場合、危険負担については債権者主義が取られていました。これは、物件の引渡しを受ける権利を持っている方(買主/債権者)が、負担を負うという主義で、具体的に言うと、買主は破損した家を引き渡してもらって、売買代金全額を支払わなければなりません。

しかし、それではあまりに不合理だということで、特定物であっても、不動産の売買契約においては、債務者主義に修正する特約が結ばれていることが普通でした。この場合、物件を引き渡す債務を負っている方(売主/債務者)が負担を負うことになります。つまり、天災等によって物件が滅失した場合、買主は契約解除を要求することが出来ますし、支払った手付金などのお金も戻してもらうことが出来ました。

民法改正後(2020.4.1~)の規定

改正民法では、債権者主義の規定が削除されたため、危険負担の特約がなかったとしても、特定物の売買については債務者主義が適用されます。(民法536条

そのため、例えば、引渡し前に建物が天災により焼失してしまったとしても、買主は代金の支払いを拒むことが出来ます。実質的には、今までと変わりません。

改正 民法の規定

inserted by FC2 system