5-1 賃貸借契約に適用される法律

借地借家法

借地借家法は、「建物の賃貸借」「建物の所有を目的とする土地の賃貸借」「建物の所有を目的とする地上権の設定」に適用されます。

それ以外の賃貸借や、使用貸借(賃料が無料)に関する事項については、民法が適用されます。

また、当事者が宅建業者かどうかは関係なく適用されます。

借地借家法は賃借人を保護する性格が強いため、賃借人に不利となることについては強い制限が掛けられています。
借地借家法の規定は、その殆どが強行規定となっているため、当事者(貸主・借主)で合意のもとに法律と異なる取り決めをしたとしても、裁判上の争いになった場合は法律の規定が優先されます。例えば「賃貸人が希望するときに賃貸借契約が終了する」などは、無効となる特約の典型的な例です。

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東京地裁H31.2.13 マンションのビルトイン型駐車場契約について、借地借家法は適用されないとした事例

民法

民法

不動産の賃貸借に関しては、基本的には、特別法である借地借家法が適用されることになりますが、「借地借家法では規定されていない事項」「建物と無関係の賃貸借」「使用貸借(無料貸し)」等については、民法の規定が適用されます。

民法 第3編 第2章 第7節の601条から、622条までの範囲で定められていますので、建物以外の物を貸す場合には、頭に入れておいた方が良いでしょう。また、民法は任意規定が多いため、当事者(貸主・借主)の合意があれば、ある程度まで、法律と異なる取り決めをすることも有効です。

消費者契約法

消費者契約法

消費者契約法とは、消費者と事業者との間の契約で適用される特別法のことで、不動産の売買契約だけでなく、賃貸借契約にも適用されます。強行規定となっていますので、法律に反する取り決めは、当事者間の合意があっても無効となります。

消費者の定義

事業者以外の個人全般を指します。

事業者の定義

法人、団体、または事業のために契約の当事者となる個人を指します。宅建業者や商人は当然事業者です。
(企業、地方公共団体、PTA、弁護士などの士業、個人事業主、etc)

賃貸人は賃貸事業を営んでいますので、事業者になります。
賃借人は、個人が居住用に借りる場合は消費者です。法人で借りたり、店舗や事務所を借りる場合は事業者になりますので、消費者契約法の適用はありません。

消費者契約法の適用を受ける契約であれば、重要な事項の説明が違っていた場合は、この法律に基づいて契約を取り消すことが出来たり、あまりにも消費者に過大な負担を強いる特約(原状回復等)がある場合は、この法律に基づいて特約の無効を争うことが出来ます。

高齢者の居住の安定確保に関する法律

高齢者

『高齢者の居住の安定確保に関する法律』は、高齢者の居住の安定の確保を図ることをもって、その福祉の増進に寄与することを目的に作られています。

「福祉サービスの提供を受けることができる高齢者向けの賃貸住宅等の登録制度」「良好な居住環境を備えた高齢者向けの賃貸住宅の供給促進」「終身建物賃貸借制度」等が規定されています。

賃貸の基礎知識1-9『終身建物賃貸借契約

賃貸のトラブル事例7-6『賃借人の相続人に賃借権を相続させないという特約の有効性は?

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