4-8 賃貸借契約書の内容『残置物処理の特約』

残置物

アパート等の賃貸借契約に当たり、入居希望者が高齢の単身者で相続人等がいない場合、死亡時の面倒を嫌って、入居をお断わりするということがあります。賃借人が亡くなった場合、通常は相続人が契約解除や残置物の片づけを行いますが、相続人が不明(連絡がつかない)だと、契約解除も残置物の処理も難航することが目に見えているからです。

近年は高齢者も増えているため、こういった問題の一助になるように、国土交通省が2021年に「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しました。「解除関係事務委任契約」「残置物関係事務委託契約」「賃貸借契約に組み込む条項」から成り立っており、簡単に言うと、賃借人が持つ契約解除と残置物処理の権限を第三者に委任しておくことで、賃借人死亡時の手続きをスムーズに行うというものです。

なお、モデル契約条項は、高齢(60歳以上)の単身者以外の賃借人に対しては無効になる可能性があるそうです。

解除関係事務 委任契約

賃借人の死亡時に、賃借人に代わって賃貸借契約を解除する権限を、第三者に委任します。

国土交通省は、受任者としては、「賃借人の推定相続人のいずれかとするのが望ましく、その上で、推定相続人の所在が明らかでない、又は推定相続人に受任する意思がないなど推定相続人を受任者とすることが困難な場合には、居住支援法人や居住支援を行う社会福祉法人のような第三者を受任者とするのが望ましいと考えられる」と述べています。

賃貸人が受任者になった場合は、利害が対立することが考えられることから無効とされる恐れがあり、管理業者が受任者になる場合は「賃貸人の利益を優先することなく、委任者である賃借人(の相続人)の利益のために誠実に対応する必要がある」と述べられています。

残置物関係事務 委託契約

賃借人の死亡時に、賃借人に代わって、賃貸物件内に残された残置物(動産類)の処理、換価、相続人への金銭の受け渡し等を、第三者に委任します。

受任者の要件については、解除関係事務委任契約の時と同じです。

賃貸借契約におけるモデル契約条項

上記の二種の委任契約が行われていることを確認して、賃貸借契約を締結したとしても、賃借人が存命中に委任契約が解除されてしまうと、賃貸人としては困ってしまいます。そのため、賃借人が委任契約を解除した場合は、同内容の委任契約を結ぶ努力をすることや、委任契約が解除された時等には、賃貸人に通知することを定めています。

 参考:残置物の処理等に関するモデル契約条項のサイト|国土交通省

 参考:残置物の処理等に関するモデル契約条項 Q&A|国土交通省

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