1-5 一般の人が不動産を繰り返し販売(反復継続売買)をすると、宅建業法違反(無免許営業)となるか?
反復継続と宅建業法違反(無免許営業)の関係
宅建業法の規定では、宅建業の免許がない者が宅建業(宅地建物の売買や仲介)を営む行為、いわゆる無免許営業が禁じられています。(宅建業法3条、12条)
宅地建物の売買が宅建業に当たるのかどうかは、『宅建業法の解釈と運用』の5つの要件に照らして、事業性があるかどうかで判断されます。当該宅地建物売買に事業性があると判断された場合、宅建業に該当することになりますので、もし無免許の者が当該行為を行っていた場合、宅建業法違反(無免許営業)となります。
事業性の有無を判断する5つの要件ですが、その中の1つに「反復継続的に取引を行おうとするものは事業性が高い」との記述があります。「反復継続的な取引」については、容易かつ客観的に判断することが可能であるので、事業性がある(宅建業)と判断されやすい行為の一つとなっており、実際に反復継続的に不動産売買を繰り返し、逮捕されたケースもあります。
なお、免許を有する宅建業者が仲介に入ったとしても、売主が無免許の場合、反復継続による事業性は否定されるものではないことに留意が必要です。
宅地建物取引の反復継続性とは?
同一人物が2回以上の宅地建物取引(不動産売買)を行った場合、反復継続に該当します。
不動産を買って、売れば、それだけで2回の取引になりますし、相続した土地を2分割して、Aさんと、Bさんに売った場合も2回の取引になります。また、Aさん、Bさんと同日同時刻に契約を締結して売った場合も2回の取引です。
1回目の取引の後で、1年間空けて、2回目の取引を行えば大丈夫という話も耳にしますが、宅建業法上、そのような規定はありませんので、仮に1年以上の期間を空けて取引を行った場合も、反復継続的に売買したと指摘される可能性はあります。
実際に何区画以上の分譲をしたら無免許営業となるのか?
行政の裁量による部分もありますし、露見するか否か(密告されるか否か)の問題もありますので、確定的なことは言えません。例えるなら、スピード違反の取り締まりに似ています。
『法定時速40kmの道で時速55kmで走っても、まず捕まりませんが、絶対に捕まらないわけではありません』
『法定時速40kmの道で時速100kmで走れば、まず捕まえられますが、絶対に捕まるわけではありません』
つまり、2区画をひっそり販売するなら捕まる可能性は低いですが、10区画の分譲販売で大々的に広告を出した場合等は捕まる可能性が極めて高くなると考えられます。
その他の判断要素
事業性の判断は、反復継続性だけではありません。相続した物件を分割して売却するような場合、税金を納めるために売却しなければならない場合などについては、事業性が低いと判断され、宅建業に当たらないとされることもあります。
無免許営業と判断された場合
無免許営業を行った当事者(一般人)は、警察のご厄介になることになります。個人に対しては宅建業法79条により、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金。又はその併科。法人に対して宅建業法84条により1億円以下の罰金刑が定められています。
無免許営業行為を、宅建業者が仲介業者として手助けした場合、当該宅建業者は無免許営業の幇助という扱いになります。行政処分の他、幇助罪(刑法62条、63条)で処罰される可能性があります。
宅建業法の解釈と運用(宅建業に該当するかどうか)
第2条第2号関係
1 「宅地建物取引業」について
(1)本号にいう「業として行なう」とは、宅地建物の取引を社会通念上事業の遂行とみることができる程度に行う状態を指すものであり、その判断は次の事項を参考に諸要因を勘案して総合的に行われるものとする。
(2)判断基準
①取引の対象者
広く一般の者を対象に取引を行おうとするものは事業性が高く、取引の当事者に特定の関係が認められるものは事業性が低い。
②取引の目的
利益を目的とするものは事業性が高く、特定の資金需要の充足を目的とするものは事業性が低い。
③取引対象物件の取得経緯
取引対象物件の取得経緯:転売するために取得した物件の取引は事業性が高く、相続又は自ら使用するために取得した物件の取引は事業性が低い。
④取引の態様
自ら購入者を募り一般消費者に直接販売しようとするものは事業性が高く、宅地建物取引業者に代理又は媒介を依頼して販売しようとするものは事業性が低い。
⑤取引の反復継続性
反復継続的に取引を行おうとするものは事業性が高く、1回限りの取引として行おうとするものは事業性が低い。