4-1 法人が売主となる売買契約における 契約不適合責任特約の有効性
売主が宅建業者以外の事業者(法人)で、買主を一般消費者とする不動産売買契約の契約不適合責任特約については、少し注意が必要になります。売主が宅建業者以外の事業者の場合、宅建業法は適用されませんが、消費者契約法が適用されることになるからです。
売主の契約不適合責任を完全に免責する特約を付した場合、消費者契約法8条により、その特約は無効になってしまいます。
また、売主が瑕疵担保責任を負う期間を短期間にしてしまった場合も、消費者契約法10条により、無効になってしまう可能性があります。
契約不適合責任を負う期間の設定について
民法改正前の判例ですが、売主が瑕疵担保責任を負う期間を3ヶ月と特約したものは、消費者契約法により無効とする地裁判決が出ています。
契約不適合責任になっても、考え方は同様ですので、契約不適合責任を負う期間をあまり短く設定するのは売主である事業者にとって危険です。宅建業者が売主になる場合と同じように引き渡しから2年とするか、民法と同じように、買主が契約不適合を発見してから1年間とすれば、有効な特約になるとは思いますが、そうすると売主の事業者の負担が重すぎるような気がしないでもありません。
以上のことを鑑みると、仲介業者としては、契約不適合責任の通知期間を引渡しから1年程度に設定しておき、買主に対しては「契約不適合については引渡しから1年以内に通知する必要があること」をしっかり説明して理解を求めておく。
その一方で、売主事業者には念のため「裁判になった場合、契約不適合責任特約が無効になる可能性があること」を説明しておく。
必ず勝てるわけでもない裁判を起こすのは、買主も労力が要りますから、余程のことが無い限り、そのやり方で問題にはならないと思います。
消費者契約法により無効となる特約をしてしまった場合
一般法である民法の規定が適用されることになります。民法上、買主は契約不適合を知ってから、1年の間に売主に対して契約不適合を通知する必要があります。(通知していても5年で時効。買主が契約不適合に気がつかない場合でも、引渡しから10年で時効)。
売主事業者は随分長い間、契約不適合責任を負わなければならなくなりますので、場合によっては、無効な特約をつけた仲介業者に矛先が向けられる可能性がありますので、気をつけてください。
売買の基礎知識4-2『売買契約書の内容「契約不適合に関する特約」』
改正民法まとめ3-1『民法改正で、消滅時効期間がどのように変わるのか?』
東京地裁H22.6.29 | 瑕疵担保責任を3カ月とする特約は無効とした事例 |
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