2-2 中古住宅を購入したが、不等沈下(不同沈下)により建物に傾きがあった

Q【買主】

中古住宅の買主です。

築20年の木造の中古住宅を、このたび購入しました。引渡しを受けて、引越しを完了したところ、建物の床の一部が傾いているような気がしたので、専門家に調査してもらいました。
その結果、土地の不等沈下(不同沈下)が原因で、建物全体が傾斜していることが分かりました。

修理するには数百万円の費用が掛かるとのことですが、この場合、売主に対して何らかの責任追及ができますか? また仲介業者に対してはどうでしょうか?

不等沈下
A

売主への責任追及は?

売主が建物の傾斜について、知っていたか、知らなかったかで、責任追及の可能性は大きく変わってきます。

例えば、売主が建物を親から相続したばかりで、一度も当該建物に居住していない場合、傾斜を始めとした不具合について承知していないことがあります。そのような事情がある場合、売主の告知義務違反や、説明義務違反を求めていくのは難しいと考えられます。

そのため、基本的には契約不適合責任を追求できるかどうかを検討していくことになります。

不等沈下(不同沈下)により建物が傾斜している場合、余程、軽微な傾斜ならば別ですが、基本的には契約不適合に該当する可能性が高いと言えます。
売買契約書に、売主の契約不適合責任を免責する特約が付されておらず、かつ契約不適合責任を追及できる期間内に通知をしていた場合、買主の損害賠償請求は認められる可能性が高くなります。

もし、売主が傾斜について知っていながら告知しなかったという事情が証明可能であれば、告知義務違反(不法行為)に基づいて、損害賠償請求をすることも可能であると考えられます。

仲介業者への責任追及は?

一般的に仲介業者は物件の物的状況に隠れた瑕疵があるか否かの調査について、高度な注意義務を負っていないと言われています。
そのため、事実を知っていながら隠していたと考えられる場合、例えば『売主から傾斜の事実を告げられていた』とか、『見た目だけで明らかに傾斜していることが分かる』などの事情がない限り、調査義務違反、説明義務違反を問うことは難しいと考えられます。

契約不適合となる傾斜の基準は?

「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によれば、3m以上の2点間で測った場合、新築住宅で、3/1000以下(1メートル離れた所で3ミリ以下)の傾斜である場合、中古住宅で6/1000以下(1メートル離れた所で6ミリ以下)の傾斜である場合は、許容範囲とされています。

また、3/1000未満の傾斜で、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が低い

3/1000以上、6/1000未満の傾斜で、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が一定程度存する

6/1000以上の傾斜で、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が高い。とされています。

交渉の段階では、上記品確法の基準、下記裁判例などを根拠にして、売主、または仲介業者と話し合っていきます。

不動産適正取引推進機構のHPへ
東京地裁H24.6.8 不等沈下による瑕疵担保責任が認められた事例
東京地裁H13.6.27 不等沈下と、売主、媒介業者の責任
秋田地裁H10.11.20 不等沈下と、売主業者、県の責任
国土交通省のHPへ
傾斜の基準 住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準
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