1-1 売買契約締結後すぐに契約解除を申し出ても、支払ったお金は返ってこないのか?

Q【買主】

買主です。

宅建業者から熱心な勧誘を受けて、新築マンションを購入することにしました。売買契約書に署名捺印し、売主業者に手付金100万円、仲介業者に仲介手数料50万円を支払いました。

しかし、家に戻って家族に話をしたところ、大反対されたため、翌日には「売買契約を解除したい」と仲介業者に申し出をしました。

ところが、仲介業者からは「仲介手数料も、売主業者に支払った手付金も一切戻りません」と言われました。売買契約を締結した次の日に解除したのに、本当に1円も返してもらうことが出来ないのでしょうか?

即解除
A

売買契約の成立とその効力について

売買契約は、原則として売主と買主が売買契約書に署名捺印をした時点で成立します。(法律上は不動産の売買契約であっても、諾成契約(口頭契約)で成立するとされていますが、判例上は諾成契約を認めないケースが多いため)

売買契約が成立した以上は、売買契約書で取り決めた条項に従って、物事を処理していくことになります。
それは例え、買主が売買契約書に署名押印をした直後のことであっても同じであり、「売買契約書に押印してから、すぐに契約解除を申し出たから全て帳消しにしても良いだろう」というのは、一般的には通じません。

何はともあれ売買契約書の条項を確認してみよう

もし、売買契約書に「契約後○日以内であれば白紙解除できる」旨の規定があれば、白紙解除して、支払った金員も返還してもらえますが、通常はそのような特約はつけられていません。

売買契約書に、手付解約条項がある場合は、買主は支払い済みの手付金を放棄することで、売買契約を解除することが出来ます。

売買契約書に、手付解約条項がない場合は、買主は売主の合意を得られない限り、原則として売買契約を解除することが出来ません。(実務上では買主が売主に対して違約金を支払うことで合意解約となります)

通常、手付金よりも、違約金の方が高額に設定されていますので、手付解約が出来るかどうかを良く確認する必要があります。

残念ですが、仲介業者への報酬の支払いが必要となります

仮に売主が白紙解除を了承してくれたとしても、売買契約が一旦成立している以上、買主は仲介業者に対しては仲介手数料を支払わなければなりません。仲介業者としては、売買契約を成立させた時点で仕事をほぼ全うしていますので、すぐに契約解除になったからと言っても、報酬を支払わなくて良いということにはならないのです。

買主が、仲介業者への仲介手数料の支払いを拒める場合は限られていて、例えば、仲介業者の説明義務違反が原因で売買契約を解除せざるを得なくなった場合とか、売買契約上の白紙解約特約(ローン解約等)に従って、売買契約が解除される場合となります。家族の反対で止めたくなった等では理由になりません。

実務的な話を一つ

原則としての考え方は上記の通りですが、売買契約に署名押印してから、あまりにもすぐに売買契約を解除した場合、またはどうしようもない理由で売買契約を解除した場合、売主や仲介業者が、ある程度、条件を譲歩してくれることがあります。
印紙代やら、何やらで、時間や経費を掛けていますので、全くの白紙解除にするのは難しいと思いますが、良く話し合ってみましょう。

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