1-10 賃貸借契約の仲介手数料は賃料何ヵ月分が適正なのか?

Q【賃借人】

借主です。

不動産会社の仲介で、賃貸アパートを借りました。
賃貸借契約締結に当たり、仲介手数料は賃料の1か月分を請求されたので支払いましたが、後で知人から、賃貸の仲介手数料は賃料の0.5か月分で良い筈だとの話を聞きました。

もしそれが本当なら、支払ってしまった仲介手数料のうち賃料0.5か月分を返還してもらうことができるのでしょうか。

仲介手数料
A

法律の規制

宅建業法上の報酬に関する規制は、国土交通省の告示の内容によります。

当該告示では「宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額の合計額は、当該宅地又は建物の借賃の1月分の1.08倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の1月分の0.54倍に相当する金額以内とする」となっています。

つまり、原則として、賃料の0.54倍(消費税込み)の仲介手数料が発生し、例外として、賃借人が承諾している場合には賃料の1.08倍(消費税込み)が発生しますので、もし承諾を一切していないようならば、余分に支払った賃料0.5か月分については返金してもらえると考えられます。

 ※返金してくれない場合は裁判するしかありません。

承諾の方法

承諾の方法については、細かい取り決めはなされていないようですが、例えば「宅建業法上の報酬規制の仲介手数料は賃料の0.5か月分ですが、本件賃貸借契約では賃料の1か月分を支払うことに同意します」等が記載された書面に、賃借人が署名押印しているようであれば、間違いなく、承諾したものと見做されると思います。

場合によっては、仲介手数料1か月分が記載された明細書に署名押印しただけでも承諾したと見做される可能性がありますし、口頭による承諾だけでも、有効な承諾と見做される可能性があり得ると考えられます。

承諾の時期

承諾の時期については2020年1月14日、東京高裁で判例が出ています。

承諾の時期については、賃貸借契約が締結する前までではなく、仲介契約の依頼が成立するタイミングでなければならないとの判示です。仲介契約が成立した後に、賃借人が賃料1か月分の手数料ということを認識したとしても、それでは遅すぎるというわけです。

また、仲介契約の依頼が成立するタイミングについては、賃借人が入居の意思表示を仲介業者に行い、賃借人が契約締結日の案内を受けた日としていますので、少なくともそれより以前に承諾があったかどうかが判断の分かれ目になります。

国土交通省告示

第4 貸借の媒介に関する報酬の額

 宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額の合計額は、当該宅地又は建物の借賃の1月分の1.08倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の1月分の0.54倍に相当する金額以内とする

第7 第2から第6までの規定によらない報酬の受領の禁止

①宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関し、第二から第六までの規定によるほか、報酬を受けることができない。ただし、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額については、この限りでない。

②省略

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