4-2 隣の部屋で自殺があったことの説明がなかった

Q【賃借人】

借主です。

賃貸アパートの賃貸借契約を締結して、1室を借り受けましたが、同じアパートに住む人から、自分の隣の部屋に住んでいた住人が約1ヶ月前に自殺しており、今も空き室になっていることを聞きました。正直、このまま住み続けるのは気味が悪いです。

賃貸借契約をする時に、仲介業者から重要事項説明を受けていますが、自殺のことを知っていた筈なのに、そのことについては何の説明もありませんでした。

これは説明義務違反に当たるのではないでしょうか? 賃貸借契約の解除や、損害賠償を請求することが出来ますか?

不告知
A

原則として、賃貸借契約の解除も、損害賠償の請求も難しいと考えられます。

自殺した部屋そのものの賃貸借契約においては、仲介業者にも告知義務があると言われていますが、自殺のあった部屋の隣室の賃貸借契約については、過去の裁判例を見る限り告知義務があると判じたものはありませんし、損害賠償の対象としたものも見当たりません。隣室、上の階の部屋、下の階の部屋については、自殺があった部屋よりも相当に嫌悪感が少ないということで、心理的瑕疵には当たらないとしているようです。

自殺のあった部屋と接してもいない部屋については、言うまでもなく、心理的瑕疵としては認められないでしょう。

結論としては、心理的な瑕疵に該当するほどの特殊な事情がある場合や、借主が賃貸借契約の締結前に仲介業者に対して「建物内で自殺が無かったか?」等の特別の質問をしている場合を除いて、仲介業者や賃貸人に対しては責任を問えないと考えられます。

 ※2021年10月8日、不動産取引における心理的瑕疵に関するガイドラインが策定されましたが、ガイドラインでも同様の見解です。

 参考:不動産取引における心理的瑕疵に関するガイドライン | 国土交通省

不動産適正取引推進機構のHPへ
東京地裁H19.8.10 自殺があった部屋以外の部屋を貸す時には告知義務がないとした事例
仙台地裁H27.9.24 賃貸マンションの入居者に他の部屋で自殺があったことを告知する義務はないとした事例
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