4-5 大規模修繕の予定があることの説明がなかった

Q【賃借人】

借主です。

2ヶ月前に賃貸マンションの賃貸借契約を締結し、引っ越しを完了して居住を始めましたが、最近になって、マンションで大規模な修繕工事が開始されました。足場などで日当たりが悪くなりますし、音が五月蝿くて苦しんでいます。静かな環境を求めていたので、この状態がしばらく続くことはとても耐えられません。

もし、入居前に貸主や仲介業者から、そういった説明を聞いていたら、当然、賃貸借契約を締結はしませんでした。

これは説明義務違反に当たるのではないでしょうか?

賃貸借契約の解除や、損害賠償、家賃の減額請求等を請求することは出来るのでしょうか?

大規模修繕工事
A

仲介業者への責任追及は?

賃貸借契約においては、大規模修繕工事の予定などは、原則として仲介業者の調査項目や説明事項に入っていませんので、仲介業者に対する損害賠償等は難しいと考えられます。

ただし、賃借人が賃貸借契約前に仲介業者に対して「今後、大規模修繕工事が予定されているか?」等のように尋ねていた場合や、賃貸人が仲介業者に大規模修繕工事の内容や日程等を告げており、かつ、当該大規模修繕工事が賃借人の住生活に悪影響を及ぼすものであった場合は、仲介業者に説明義務が生じる可能性があります。

仲介業者に説明義務があると認められた場合には、賃借人は仲介業者に対して債務不履行責任や不法行為責任に基づいて、損害賠償請求が出来ます。

賃貸人への責任追及は?

賃貸物件の修繕工事については、民法606条2項により、賃借人側に受忍義務がありますので、適正な修繕工事であって、負担を強いられる程度が低い場合、原則として、賃貸借契約の解除や、家賃の減額請求等は難しいと考えられます。

ただし、負担を強いられる程度が低くない場合、つまり、一般的な感覚として、賃貸借契約の締結を再考する重要な情報(風や光が長期間に渡って遮られる、振動がする等)である大規模修繕工事であった場合、賃貸人は、賃借予定者にその旨を説明すべき信義則上の義務を負っていたと解されます。

その場合、賃貸人が当該説明をしていない時は不法行為責任を負いますので、慰謝料等の請求が出来る可能性があります。

不動産適正取引推進機構のHPへ
東京地裁H29.7.20 大規模修繕工事の説明がなかったと主張し、賃料を支払わなかった借主に対し、契約解除、未払い賃料支払い請求が認められた事例
東京地裁H28.5.24 中古マンションの大規模修繕工事の説明がなかったことに対する買主の賠償請求が棄却された事例

民法の規定

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