1-11 賃借人の名義変更(借家権譲渡)に大家の承諾が必要か?

Q【賃借人】

借主の妻です。

この度、離婚することになりました。
現在、借りている賃貸借物件からは、夫が転居し、私がそのまま住み続けることになりましたので、管理業者に賃借人の名義変更をお願いしたところ、大家さんが拒否しているから、名義変更は認められないとの回答でした。

もし夫が現在の賃貸借契約を解除するようなら、立ち退いてほしいとのことです。どうしたら良いでしょうか?

借家権譲渡
A

賃借人の名義変更に、賃貸人の承諾は必要か?

一般的な賃貸借契約書を使用している場合、「賃借人の名義変更(借家権譲渡)や転貸には賃貸人の承諾を必要とする」旨の特約が付されていると思いますので、それに従う必要があります。

また、当該特約が付されていなかったとしても、民法612 条1項にも同様の規定がありますので、「名義変更に承諾は不要とする」旨の特別な合意が無い限りは、賃貸人の承諾が必要になると考えてください。

仮に、賃借人と新賃借人の二人の間だけで勝手に借家権譲渡をしてしまった場合、契約違反として、賃貸借契約を解除される可能性があります。

なお、土地の賃借権(借地権)の譲渡の場合は、借地借家法19条に規定されている借地非訟制度により、賃貸人(地主)の承諾がもらえない場合でも、裁判所が代わりに承諾をしてくれる制度(賃借人が変更になっても賃貸人に不利益がない場合等)があります。借家権の譲渡にはそのような法律がありません。

実際、どうしたら良いの?

(1)賃貸人を説得出来れば、それが一番です。

賃貸人が名義変更の承諾をくれない理由は色々考えられますが、まずはその理由を、賃貸人または管理業者から聞き出します。もし、今後の賃料支払いへの不安が障害になっているようであれば、賃料を毎月確実に支払うことが出来る根拠等を示して、名義変更に応じてくれるよう説得します。どうしようもない理由で拒否されているようであれば、残念ですが名義変更は諦めるしかないでしょう。

(2)賃借人の名義人を夫のままにしておき、妻が実質賃料を負担するという手もあります。

この場合、元夫が賃貸借契約関係から離脱出来ないことになりますので、元夫の承諾を取らなければなりません。(妻が家賃滞納した場合、名義人である元夫が家賃を支払わなければならない)
また、契約者である元夫が貸室に住まなくなってしまいますので、賃貸人に対しても事情を説明しておく必要があると考えられます。

(3)諦めて引っ越す。

お金は掛かりますが、(1)や(2)の手段が使えない以上、割り切るしかないでしょう。

全日本不動産協会のHPへ
2013年3月掲載 借家権の譲渡承諾を拒絶した場合の法律関係

民法の規定

借地借家法の規定

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