1-4  手付解除されたのに、仲介手数料を全額払わなければならないのか?

Q【売主】

売主です。

先日、中古住宅の売買契約を締結しましたが、買主が「事情があって売買契約を解除をしたい」と意思表示をしましたので、売買契約書に定めた約定どおり、手付金を没収することにしました。

売買契約の締結時に、仲介業者に仲介手数料の半額を支払っていましたが、売買契約の手付解約が確定した後、仲介業者から仲介手数料の残り半額を請求されました。

私には一切の非が無く、買主の一方的な理由で売買契約が解除されたのですが、仲介手数料の残額を支払わなければならないのでしょうか?

仲介手数料の支払い
A

手付解除時にも報酬請求権が発生するのか?

仲介業者の仲介報酬請求権は、売買契約が成立した時点で発生していると考えられていますので、当事者の一方からの手付解除(違約解除)があったとしても、仲介業者には約定報酬の全額について請求権があります。

ただし、過去の判例によると、仲介業者の仕事には、通常、売買契約までではなく、物件の引渡しまでが含まれていることから、手付解約になった場合、その業務を行う必要がなくなったことを斟酌して、約定報酬の全額を認めなかったものがあります。
当該判例では、売主が買主から没収した手付金の額も考慮して、最終的な仲介業者の報酬が決定されました。

手付解除された時に仲介手数料を請求されたら

わざわざ裁判を起こすのも面倒でしょうから、判例を元に話し合いで解決するのが良いと思います。買主から没収した手付金が高額であり、損失を穴埋めしても、プラスになるのであれば、約定報酬額か、それに近い額を支払っても良いと思います。
逆に小額手付であり、損失の穴埋めにもならない場合は、仲介業者と良く話し合うべきです。

こういったトラブルを防ぐ為には、あらかじめ手付解約(違約解約)になった場合、仲介手数料(報酬)をどうするのか取り決めておくこと。簡単に小額手付で売買契約しないことなどが肝要です。

売買の基礎知識4-5『売買契約書の内容「手付解約特約」

不動産適正取引推進機構のHPへ
東京地裁R1.12.3 手付解除の場合には媒介報酬の支払いは不要になるとの合意があったとする買主の主張が棄却された事例
福岡高裁H15.12.25 商法512条による報酬が認められた事例
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