5-7 借主が約定の更新料を支払ってくれない

Q【賃貸人】

賃貸アパートの大家です。

賃貸借契約の更新期間になりましたが、借主が賃貸借契約書に定めのある更新料を支払ってくれません。

更新料を支払ってくれない理由として、借主は建物の管理状態に不満があると言っていますが、大家としての義務は十分に果たしているものと考えています。

借主が、このまま更新料を支払ってくれない場合は、賃貸借契約の更新を拒絶することが出来るのでしょうか?

疑問
A

更新料の支払い特約は、高額に過ぎない限り、有効な特約であると解されていますが、更新料の支払いが無いことだけを持って、直ちに賃貸借契約の更新を拒絶、または契約を解除するというのは困難(裁判所が認めてくれない)であると考えられます。

賃貸借契約を解除するには、形式的に契約条項に違反しているということだけでは不足であり、賃貸人と賃借人の間の信頼関係が破壊されていると認められる必要があります。更新料が不払いとなっている期間、態様、経緯、その他の事情を考慮して、信頼関係が破壊されていると認められた時に初めて賃貸借契約の解除が認められます。

賃貸借契約の更新拒絶については、賃貸人側に正当事由があることが必要です。賃借人が更新料を支払わなかったことだけをもって、直ちに正当事由に当たるとは判断されないものと考えられます。

また、賃借人から更新料を支払ってもらえず、賃貸人から更新料の支払い督促等も積極的に行わず、ずるずると賃貸借関係が続くことを黙認してしまいますと、更新料の不払いを理由とする契約解除が認められなくなってしまう恐れがあります。最終的に裁判をやるか、やらないかはともかくとして、内容証明郵便など、証拠が残る形で請求だけはしておいた方が良いと考えられます。

賃貸借の基礎知識2-3『更新料と更新手数料

不動産適正取引推進機構のHPへ
東京地裁H29.9.28 長期に渡る2回の更新料不払いにより、契約解除が認められた事例
東京地裁H23.11.30 遅れて更新料を支払ったため、契約解除が認められなかった事例
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