2-2 老朽化(耐震性に不安がある)ので立ち退いてくれと言われた
【賃借人】築年数の古い賃貸アパートを借りています。
借り始めてから数年が経っていますが、大家さんから突然連絡があり、「物件が古くなってきたし、地震が来たら壊れそうで不安だから、半年後には立ち退いて欲しい。老朽化は立ち退きを求める正当事由になる筈です」と言われました。
建物の老朽化が原因で立ち退きを求められた場合、半年経ったら、大家さんの言うように立ち退かなければならないのでしょうか?
また、立ち退かなければいけない場合、立ち退き料を請求しても良いのでしょうか?
借地借家法の規制について
賃貸人からの、賃貸借契約の解約の申し入れは『借地借家法』によって厳しい制限が設けられています。具体的には「6ヶ月前に通知すること」と「賃貸人に正当事由が具備されていること」が必要とされています。(借地借家法27条、28条)
そのため、それらの要件を満たしているかどうかを検討していく必要があります。
賃貸の基礎知識5-1
『賃貸借契約と借地借家法』
老朽化(耐震性不足)が正当事由に当たるか?
建物の老朽化や耐震不足は、賃貸人が賃借人に対して退去を求める正当事由の一要素とはなりますが、過去の裁判例では、老朽化(耐震性不足)のみで完全なる正当事由として認められたことは、ほぼありません。
殆どの事例では老朽化という事情に加えて、賃貸人が相当額の立ち退き料を、賃借人に支払うことによって、正当事由が補完されるとした判例となっています。
賃借人は立ち退かなければならないのか?
老朽化の程度にもよりますが、立ち退きを拒否することは可能であると考えられます。また、仮に立ち退くにしても、無条件で立ち退く必要はないと考えられますので、賃貸人と立ち退き条件について交渉をしてみましょう。賃貸人が法律や過去の裁判例を完全に無視するような方でなければ、ある程度の交渉には乗ってくると考えられます。もし、賃貸人が立ち退きの要望を述べるばかりで、立ち退き料を一切支払わないということであれば、立ち退く気はないという意思表示を行いましょう。
ただし、注意すべき点として、賃貸人との交渉を完全に打ち切った場合、賃貸人から立ち退きの裁判を起こされる可能性があることです。その場合、手間暇お金が掛かりますが適切に応じる必要があります。
結論
賃貸人から立ち退きを求められる場合、最近では、賃貸人の方から立ち退き料等の条件について提案があると思います。
もし妥当な立ち退き料を提示され、妥当な期間の猶予をもらえたなら、応じるようにしてあげましょう。嫌がらせしても良いことはありません。
賃貸のトラブル事例2-1『6ヶ月前の立ち退き請求の有効性』
賃貸のトラブル事例2-3『立ち退き料の算定方法は?』
東京地裁R1.12.12 | 築後57年を経過した木造平屋戸建て住宅の明け渡し請求 |
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東京地裁H26.12.19 | 特定緊急輸送道路に面する建物の明け渡し請求 |
東京地裁H25.12.11 | 築後95年の建物の明け渡し請求 |
東京地裁H25.6.14 | 震度5弱で倒壊しかねない建物の明け渡し請求 |
東京地裁H25.3.28 | 耐震性に問題のある大規模賃貸マンションで正当事由が認められた事例 |
東京地裁H25.1.25 | 耐震性に問題のある建物の明け渡し請求 |
東京高裁H24.12.12 | 立ち退き料を給付しても正当事由が認められなかった事例 |
東京地裁H24.1.20 | サブリース業者に対する立ち退き請求 |
東京地裁H22.3.17 | 昭和39年建築でも正当事由が認められなかった事例 |